1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……まずいわ。」
アーテルはボソリと呟いた。一連の流れを陰から覗き見ていたのだ。
「アレが?」
その横で闇夜に紛れて気配すら感じさせないラズルが呟いた。
「…一般人を巻き込んだことへの怒り?」
「そんな綺麗な事でキレるように見えるかしら…。」
「……私から見れば、十分綺麗な人だと思うけど。」
アーテルがラズルの顔を見て「正気?」と尋ねるように片眉を上げる。
「何にキレてるの。」
「…あの子のことを分かっておきながら弱みに漬け込むことよ。あの子にバイオテロの最後の…決定打を打たせるつもりよ?」
「あぁ─。でもどうするの?あの子、救えないでしょ、私達には。やった後に正気に戻っても─。」
「罪悪感に押しつぶされるオチね。」
「尚更助けられない。」
「でもバイオテロを起こさせたら──スルガが。」
ラズルがハッとしたように目を見開く。ボソリと双子の片割れの名を呟く。
「ラズル?ラズ─。」
「チュト、死なない?」
「…わ、から、ない。」
「ウイルスに関わってないの?」
「関わらせなかったのよ、トッパンが。」
「ざまぁないねぇ。キャハハッ。」
二人よりもトーンの高い声が響く。二人が振り返ると、いつの間にかそこには─。
最初のコメントを投稿しよう!