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「手馴れているな。赤ん坊を育てたことがあるのか?」
「いいえ、初めてですよ。暇潰しに育児書を読んだことがあるだけです」
趣味が読書で良かったと改めて思います。
子どもの時はとにかく本を読むのが好きで、どんな分野も好奇心のままに読んでいました。その中にあった育児書の知識が今になって役立っています。
「そうか、ならば俺にもやり方を教えてほしい。お前を頼ってしまっているが、負担ばかりかけるつもりはない」
「いいんですか?」
「もちろんだ。手伝わせてくれ」
「ありがとうございます。では、このミルクを飲ませてやってください。私は食事の片付けをしますので」
「分かった」
ハウストにイスラとミルクを手渡します。
少し心配でしたが、ハウストは丁寧な動作でイスラにミルクを飲ませ始めました。
「あなたこそ上手じゃないですか」
「お前の真似をしているだけだ。また教えてくれ」
「ふふ、もちろんです」
私は笑みを浮かべて頷くと、土間で食事の片付けを始めます。
後ろから「ゴクゴクゴク」と勢いよくミルクを飲む音がする。イスラは順調にミルクを飲んでくれているようです。
「ゴクゴクゴクゴッ……! ゴボゴボゴボ…………」
え、ゴボゴボ? なんの音かと振り返ってギョッとする。
「ハ、ハウスト! イスラが溺れています!」
慌ててイスラを抱き取りました。
「ゴホゴホッ、うぅ、う、びええええええええん!!」
「な、泣かないでくださいっ。ほら、もう苦しくないですよ? もう大丈夫ですから」
あやしながら背中をぽんぽん叩く。
ミルクまみれの顔を拭いてイスラを危機から救うと、ハウストをキッと睨む。
「ミルクを一気飲みさせるなんてどういうつもりですか! 溺れてたじゃないですか!」
「す、すまない。勢いよく飲んでいたからもっと飲みたいんだと」
「まだ赤ちゃんなんですから無理に決まってるじゃないですか!」
「そうだな、すまなかった……」
ハウストが消沈して肩を落とす。
私は呆れてため息をついてしまいましたが、彼のこんな姿を見るのは初めてで、少しだけ可笑しくなりました。
だって、私が知っているハウストはいつも悠然としていて、大人びて優しいけれどとてもミステリアスです。でもこうして彼について新しい発見ができて嬉しい。
「もういいですよ、もう怒ってません。今度から気を付けてくださいね」
「ああ、今度はちゃんとする」
「はい、お願いします」
そう言って私が笑いかけると、彼も嬉しそうな笑顔になりました。
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