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その日の晩。
私は部屋の隅にたくさんの藁を敷き詰め、その上に大きな白い布を被せました。
そんな私の作業をイスラがじっと見つめている。
「ふふふ、ベッドを作ってるんですよ。今夜からここで一緒に寝ましょう」
そう話しかけると、食後のお茶を飲んでいたハウストが顔をあげました。
「そんなことしなくても、一緒に寝ればいいだろう」
「なに言ってるんですか、イスラは毎日大きくなってるんですよ? さすがにこれ以上は無理だと思います。それに、ご自分の体の大きさ分かってますか?」
からかうように言うと、ハウストが無言で顎を引く。
ただでさえハウストの体躯は平均より一回りも大きな逞しいものです。これで窮屈なはずがありません。
「……そうだな、たしかに窮屈かもしれない」
「そうでしょう? ですから今夜からあなたがベッドを使ってください。私とイスラはこっちのベッドで寝ますから」
ハウストと一緒に眠れなくなるのは寂しいけれど、さすがに何日もこのままでは駄目だと分かっていましたから。
私はイスラを抱きあげて新しいベッドに乗せる。
すると自重で沈むのが面白いのか、イスラがころころと転がりだしました。
「チクチクしてませんか?」
「あぶ!」
どうやら大丈夫なようです。しかも気に入ったようです。
イスラはハイハイで私の膝までくると、ぽすっと頭を乗せて親指をちゅーちゅー吸い始めました。
よしよしと頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めて今にも眠ってしまいそうです。
「ふふ、良かったです。あなた、あっという間に大きくなりますからね」
「あぶー……」
「おやすみなさい」
囁くように言うと、イスラはすやすやと眠っていきました。
きっと明日になればもっとたくさんのことが出来るようになっているんでしょうね。
「すぐに眠っていきました。気に入ってくれたようです」
ハウストにそう笑いかけると、彼は優しい笑みを返してくれる。
「イスラの為にすまないな」
「いいえ、私が好きでしていることですから」
「お前には助けられてばかりだ」
「そんな……。私は、あなたに喜んでもらえれば、それで」
熱くなる頬を隠そうと俯く。
彼の言葉で簡単に一喜一憂する単純な自分が恥ずかしい。
「ありがとう、お前には感謝している」
「ハウスト……」
嬉しくて視線をあちらこちらに彷徨わせてしまう。
真っ赤な顔で照れてしまった私にハウストが喉奥で笑う。
「俺は一人寝が寂しくなってしまうな」
「ば、ばばばかなことをっ」
「ハハハッ、許せ。イスラにばかり構うから嫉妬したんだ」
「か、かか、からかわないでください!」
それは冗談ですか? 本気ですか?
どうしよう、冗談でも嬉しいです! 本気だともっと嬉しいです!
たったこれだけのことなのに胸がドキドキ高鳴っています。
私の体はきっと壊れてしまったのかもしれません。
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