第八章・私の全部をあなたにあげます。きっとこの為に私はあなたの親になったのでしょう。

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「ハウスト……っ、ぅっ、う……っ」  ハウストの元へ行きたいのに、さっきより体が熱くなっています。指先一つ動かすのも億劫なほど体が重い。 「ハウストよ、そんなに怒るんじゃない。心配しなくともこの人間が人形になってもちゃんと可愛がってやろう。神の力を持った人形とは素晴らしいじゃないか!! だから安心して死ぬといい!!!!」  先代魔王が魔力を高め、光弾を無差別に放ちました。  部屋を埋め尽くす光の弾丸。無差別攻撃は部屋中に降り注ぎ、その光景に私は叫ぶ。 「イスラ! イスラ!!」  光弾の雨の中でイスラは気を失ったままです。  このままでは流れ弾に当たってしまう。  お願いだから目を覚ましてと必死に叫ぶ。 「目を覚ましてくださいっ、早く逃げてください!! ああっ、イスラ!!」  無差別攻撃の中、一発の光弾がイスラに直撃するかと思った時。  寸前でハウストが気を失っているイスラを庇い、光弾を弾き返しました。  そしてイスラを抱き上げて光弾の雨から守ってくれる。 「良かった……っ」  そしてようやく攻撃がやむと部屋は瓦礫に埋もれていました。  圧倒的な魔力を手にした先代魔王は満足気に瓦礫を見回す。 「フハハハハハッ、いい景色になったじゃないか! 私の力はまだまだこんなものではないぞ!」  そしてまたも魔力を高めましたが、ハウストとジェノキスが同時に呪縛魔法を発動しました。  二人が出現させた魔法陣から光の鎖が放たれ、それが先代魔王の体と魔力を雁字搦めに拘束する。  それは連携によって発動された強力な呪縛魔法。しかし先代魔王はニヤリと笑うと魔力を高めだす。  ピシッ! ピシピシッ!  先代魔王の魔力が膨れ上がり、呪縛魔法の鎖に亀裂が入りだしました。 「クソッ、精霊界最強らしく、もっと本気を出したらどうだ!」 「やってるよ! 魔王様こそもっと力出せよ!!」  二人は追い詰められながらも憎まれ口を叩き合い、限界まで力を発動します。  幾つもの呪縛魔法陣が部屋中に出現し、数えきれないほどの鎖が先代魔王を拘束しました。  でも、それでも先代魔王の魔力が上回る。 「ああ、ハウスト……!」 「待っていろっ、必ず助ける!」  ハウストは私を見つめたまま言うと更に魔力を発動します。  しかし二人の呪縛魔法に限界が訪れる。  ピシピシッ! 鎖の亀裂がさらに深くなり、弾け飛びそうになりましたが。 「魔王と精霊界最強の護衛長が揃っているのに、この程度とは情けない」  フェリクトールの声がしました。  フェリクトールの強力な呪縛魔法が二人の連携に重なり、新たな呪縛魔法となる。 「フェリクトール!」 「遅れてすまなかったね、魔王よ。だがこの有り様はあまりに情けないんじゃないかね?」 「言ってくれる。だが、お前がここにいるということは」 「ああ、残念だが封印は完全に破られた。ここにいる先代魔王は本体だ」 「そうか」  三人が揃い、新たに強力な呪縛魔法が形成されました。  攻撃力が高いハウストとジェノキスが呪縛魔法の主砲となり、その莫大なエネルギーをフェリクトールが巧みにコントロールしたのです。
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