第八章・私の全部をあなたにあげます。きっとこの為に私はあなたの親になったのでしょう。

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「君達は器用さに欠けるね」 「さすが年の功だぜ!!」 「やはりお前はよく出来た宰相だ。隠居生活は諦めろ」 「来るんじゃなかったよ」  三人の呪縛魔法は先代魔王を見事に抑え込む。  先代魔王に捕まりながら私はこのまま成功してくれればと願いましたが、その時、耳元に低い声が聞こえてきました。 「ククククッ、これで私を拘束したつもりになるとは片腹痛い」  先代魔王は笑っていたのです。  そして際限なく高まりだした先代魔王の魔力。  この余裕と魔力に、まさかと息を飲む。  そう、私が先代魔王の魔力の供給源になっているのだと。  今はまだ完全に神の器と化したわけではありませんが、それでも包容させられた神の力を吸い取られている。  供給源である私が先代魔王から離れなければ三人の呪縛魔法も破られてしまいます。 「離しなさいっ、今すぐ私を離しなさい……!」 「無駄な抵抗とはご苦労なことだ」 「黙りなさい! 離せとっ、言っている、でしょう……っ!」  ふらついて倒れそうになりながらも先代魔王から逃げようと身じろぐ。  しかし外へ向かって逃げようとする私を先代魔王は嘲笑い、更に近くへと抱き寄せてくる。  今です! これを待っていました!! 「えいっ!!」  ドンッ!  逆に自分から体当たりしてやりました。  今まで外に逃げようとしていた私が急に内側に転じたので、驚いた先代魔王の力が緩む。  この一瞬の隙を見逃しません。  でも逃げようと足を踏み出した途端、ガクンッ。体を支えきれずに崩れ落ちました。 「そんなっ……!」  酷い脱力感は体力を奪っていたのです。  せっかくのチャンスなのに逃げきれない。  先代魔王がまた私へと手を伸ばして捕らえようとしましたが。 「ブレイラ、こっちだ!!」 「ハウストっ!」  強い力で抱き寄せられ、先代魔王の手から救われました。  ハウストがすぐに私の意図に気付いて助けに来てくれていたのです。  ハウストは私を横抱きして先代魔王から離れると、それを待っていたとばかりのタイミングでジェノキスとフェリクトールが呪縛魔法を畳みかけます。  私という力の供給源をなくし、先代魔王は瞬く間に鎖で拘束されていきました。 「おのれっ、人間風情がっ!!」 「あなた、魔力は強いですが体はひょろひょろですからね!!」  このまま先代魔王の力は抑え込まれていきましたがハウスト達は険しい顔のままです。  これはあくまで時間稼ぎに過ぎないと、ここにいる誰もが分かっていました。 「呪縛したままいったん引くぞ」 「賛成。立て直さないと、さすがにマズい」 「君達にしては良い判断だ」  ジェノキスが気を失ったままのイスラとフェルベオを肩に担ぎます。  先代魔王を呪縛魔法で拘束したままタイミングを計り、三人は一気に部屋の外へ駆けだしました。 「待て、どこへ行く!! 今から全員皆殺しにしてくれるわ!!!!」  先代魔王は怒りのままに膨大な魔力を爆発させました。  衝撃波が皆を飲み込もうとした刹那。 「――――これ以上、好きにさせてなるものか!!!!!!」  少年の声がしたと同時に、衝撃波を迎え撃つ強大な光弾。  今まで気を失っていた精霊王フェルベオです。 「この精霊王を愚弄したこと、決して忘れないぞ!!!!!!」  先代魔王と精霊王の力が衝突しました。凄まじい衝撃に辺りは光に包まれ、それは時間すら停止したと錯覚させるほど。  この隙に私たちは逃げだし、先代魔王を広間に一時的に閉じ込めたのでした。
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