狐が愛した初猫は

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 あの父親が言ったことは、万人にとって正論ではないだろう。  あるいは、反発ばかりを受ける言葉の数々だったかも知れない。  だが俺にとっては、(ともがら)と呼べるほど同じ志を持った男だった。  彼は努力と生まれ持った商才で財を成し、俺は偽りの愛を演じることで財を成す。  だから俺は演技として誠意を見せ、その演技を(カネ)に換えた。誠は買える。彼の正論は俺にとっても正論だ。  理美のような(うぶ)(ねこ)を探すことは造作もない。それに美しい愛を与え、金とするのが俺の(なり)(わい)だ。現在、そんな初猫を四匹ほど飼っている。金額の()()にかかわらず、演じただけのギャラは貰えるだろう。  俺はいつでも、どんな状況でも、その女が理想とする男になれる。  この才能は天が授けてくれたものだ。  そしてこれは誰にも奪われない。  泣く泣く別れを認めた。精一杯の気持ちを伝えた。人が聞けば哀れと思われる俺が罰せられる理由はない。  七化けどころか百化け千化けして見せる俺こそ、狐の王に相応しい。  素晴らしき(かな)、我が(えん)()!  だが、俺はまだ、本当の自分を知らない──。                                       (了)
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