空の箱

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いつからそうだったのか、それは今でもはっきりわからないけれど、 私にはある一定の時期の記憶や思い出がどうも欠落しているらしい。 そのことに気が付いたのは友人と話していた時のことだった。 「ねえ、大学時代の後半の頃は、授業とかサークルとか就職活動で忙しくて、今思い出して大変だったな~って思うのよね。あなたはどうだった?」 そう友人に聞かれた時のことだった。 彼女とは小さい頃からの付き合いで、私にとって数少ない心を許せる友人であり、これまで恋の話やら将来の夢だとか色んな話をしてきた仲だった。 大人になってからも何か月かに一度は顏を合わせて、お互いに話したいことをあれこれと話すのが彼女と会った時の定番になっていた。 その時も大学を卒業してから数年後、いつものように二人でお茶を飲みながら話をしているうちに彼女の大学時代の思い出話になり、そこからなんとなくついでのように彼女は私のことも聞いてみようと思ったようだった。 彼女の問いかけに、自分はその頃はどうしていたかな?と当時の記憶を思い出そうと首をひねったりしながら思い出そうとしてみたけれど、なぜか何のイメージも出てこなかった。 おかしいな。そんなはずないのに。 確かに学校には通っていたし、大学の後半は授業もかなり忙しかったはずよね。 なんだろう?うまく思い出せない。 しばらく考えてみたけれど、どうもうまくいかなかった。 なんだか少し怖くなって、今度は真剣に当時の記憶を引っ張り出そうと両目をぎゅっとつぶりながら考えてみた。 そうやって必死に思い出そうとしているのに、これといった記憶は何も浮かんでこなかった。そして同時に心もなんだか空虚に感じられる気がしていた。 何かあったはず。何もないはずはないもの。 そうだ!研修旅行に出かけたのも覚えてる。 旅行中のバスのイメージも見えてきた。 でも、その時の具体的にしていたはずの行動だとか、その時に感じた感情がどうだったかを思い出せない、感じられない、そんな感覚だった。
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