クールなキューピッドの演じ方

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昼休み、2人以外誰もいない中庭。 端から少し見える冷やかし。 目の前には顔を真っ赤にさせている男子。 「あの、波坂さん…俺、前からずっと好きでした!付き合ってください!」 告白して手を差し出された波坂時雨(なみさかしぐれ)は目の前の男子をジーッと見ていた。 上から下までジーッと眺めて、にっこり笑うと男子もこれは行けたか?と口角を上げたが、その後パァンと手が叩く音が聞こえた。 時雨が男子の差し出してきた手を叩いたのであった。 「悪いけど、私、知らない人と握手したくないの。ごめんなさいね」 とだけ言って時雨はその場を去っていった。 後ろから男子達の慰める声と罵声が聞こえたが、時雨には届いてなかった。 なんてことは無く、ばっちり時雨には伝わっていたし、心の中では時雨は涙を流しながら全力で謝罪をしていた。 (ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!でも、こうした方がいいの!許してー!!) 波坂時雨は入学した時から注目を浴びていた。周りの女子と比べたら大人びていてつい最近まで中学生だとは思えないくらいの体つきをしていたのだ。それでいて美人でそれはそれは男子達はメロメロになっていたのだ。 だが、勇気を出して告白した男子は冷たく断られてしまう。それが例え学校1のイケメンでもだ。 時雨の事を冷たいクール女子と周りが言っていたが、実際はそんな事はなく時雨自身がそう演じていたのだ。 どうして、そんな事をしているのかというと… ----- 「俺、恋人出来たわ…」 後日、時雨に告白してきた男子が友達にそう報告しているのを横目で見て、時雨は1人心の中でガッツポーズをしていた。 時雨の冷たさに触れた男子は、その後他の女子の優しさに触れてその子と付き合う事になることが多いのだ。時雨は誰かのキューピッドになれているのなら、このまま冷たい自分を演じていようと思った。 (私自身…恋愛に興味ないからね…) 「本当、時雨さんって冷たいけど使えるわよねー」 「ショックだけど、必ず断ってくれるからね」 ヒソヒソと喋る女子達の方を見て目が合うとすぐに顔を逸らされてしまい、時雨は少し落ち込んだが気にせず読書をし続けていた。 これからも続くと思っていたのだが………
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