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何日経っても、竜也は誰とも付き合うことはなく、いつも時雨にくっついてくるのであった。
そして今日も…
「やっほー!時雨さん!」
「…柊木くん…」
「もう、竜也でいいってば!」
中庭でお昼を食べようとしたら、購買で買ったパンを持って隣に勝手に竜也が座ってきて、時雨は少し困った表情を浮かべて溜め息をついた。
「何でいつも私のところに来るのよ…」
「そりゃあ、大好きだから!俺、時雨さんの事本気で好きだよ」
真っ直ぐな表情と声で伝えてくる彼に、時雨の心は少し嬉しくなったが表情には全く出さず、無視をしてパクパクとお弁当を食べ始めた。
そんな時雨に気にせずに、竜也は色々と話をしてきて一応聞いていた。
「でさー、この間の数学の問題、未だに解けなくて…」
「…それは、こうする方がいいのよ」
メモ帳を取り出してサラサラと数学の問題を書きながら説明すると、竜也の目がキラキラに輝き、説明が終わるとすぐに両手で手を掴んできた。
「!」
「ありがとう!時雨さん!めちゃくちゃ分かりやすいよ!!」
「あ、あの、ちょっと…手離して……」
クールを装うとしたが照れてしまい、時雨の顔が真っ赤に染まると竜也も時間差で顔を赤らめて謝りながら手を離した。
「ごめん!勝手に手を繋いだりして!」
「ほ、ほんとよ…!ほ、他の女子ならドキッと来るかもしれないけど…」
「え、時雨さんはドキッとした?」
首を傾げてじっと見てくる竜也に、ドキッと来たが隠すようにペチンとおでこを叩いて、空になった弁当箱を片付けてその場を去ろうとした。
しかし、時雨はピタリと止まるとクルリと振り返り竜也に問いかけた。
「ねぇ、どうして私が好きなの?」
突然の質問に竜也は目を見開いた。どうせ美人だから、体つきが良いから、と外見しか見ていないだろうと思った時雨だったが…
「時雨さん、いつも告白を振った後辛そうな表情するから!本当は心優しい人なんだなーって、そういうところに惹かれたんだ」
「っ…!」
まさかの時雨が演じている事がバレていて、驚いたがすぐに背中を向けて取り繕った。
「私は、別に…優しくなんか…」
「またまたー、告白してきた男子に彼女出来ると嬉しそうに笑ってるじゃん」
何もかもバレていることに、時雨は顔を真っ赤にし振り返って相手を睨んだ。だが竜也はずっとニコニコ楽しそうに笑っていて、時雨は恨みそうになった。
「わ、私の何を知っているのよ…」
「俺は知ってるよ、ずっと見ていたんだもん」
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