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竜也に普段の自分が演じられていたモノだとバレてしまったが。時雨は何故か心地が良かった。
竜也と一緒に食べる昼飯の時間が楽しみになっている自分がいつの間にか、いたのであった。
だが、今日の昼休みは少し違った。
先生に呼び出されてしまい、時間がズレてしまったからだ。
(さすがに…柊木くんも先に食べているよね…)
何処で食べようかと考えながら、弁当を取りに教室に向かっていると教室の扉の前でピタリと止まってしまった。
入れない訳では無いが、とある女子達の会話が聞こえてきたのだ。
「えー!あんたって、柊木好きなのー?」
「だって、かっこいいし明るいし話しやすいし…優しいじゃん。でもさ…波坂さんに告白しているの見て…ショックだったな…」
「あー…でも、波坂さんが振った男子って彼女になりやすいって言うじゃん、それ狙えば?」
「でも、最近の波坂さん…柊木と楽しそうじゃん、勝ち目なんてないよ…」
その言葉に時雨はギュッと拳を握った。
やはり、このままじゃ駄目だ…と。
(私は、演じないと………)
「あ、時雨さーん!用事終わった?」
購買から戻ってきたのか、買ったのであろうパンを持ちながら近寄ってくる竜也の方を時雨は見た。
嫌われてしまう、だけどやらないと…と、頭の中で自分に言い聞かせると…勢いパァン!と竜也の頬を叩いた。
それは廊下全体に響き渡り、廊下にいた人達はもちろん、教室からも「なんだなんだ」と色んな人が出てきて、2人に視線が向けられた。
だが、時雨は気にせずにいつもより冷たく言い放った。
「しっつこいのよ!私はあんたを振ったわよね?もう2度と近寄らないでくれる?」
「ちょっ、柊木!大丈夫?」
先程、竜也のことが好きと言っていた女子が近付いてきて(これでよし…)と心の中で呟いた時雨だったが…竜也は女子を剥がすと時雨に近付いてガシッと両手を掴んできた。
「ちょ、ちょっと…!」
「それ、時雨さんの本音?」
「っ…あ、当たり前でしょ!」
「じゃあ何で今、辛そうにしてるんだよ」
「え……」
いつの間にか涙が頬を伝っていて、時雨はすぐに拭おうとしたがその前に竜也にギューッと抱き締められてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
「ちょっ、柊木くん!?」
「俺の前では冷たい時雨さんを演じないで。心に素直な時雨さんを見せてよ!」
「っ…わ、私は……」
チラリと竜也の肩越しに、さっきの女子と目が合ってしまい振らないと…と頭の中では思うが、時雨の口からは出てこなかった。
「…俺は、優しくて可愛い時雨さんが好き、他の女子なんて興味無いから、素直な気持ち教えて」
「………わ、私も…柊木くん…いえ、竜也くんが好き…」
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