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それから数日たっても、世間は騒がなかった。
あれほどの大金だ。
落とし主としては是が非でも見つけてほしいに決まっている。
しかし、世の中は何もなかったかのように静かなものだった。
もしかして、ヤバい金だったのでは。
男は怖くなった。
確かにあり得る。
今の世の中、これほどの大金を現金で持ち歩くような者はいない。
すぐに警察に届けよう。
しかし、そこで男は考えを改めた。
警察に届けたとして、どう説明するか。
数日前に拾った大金。
なぜすぐに届けなかったのかと聞かれるかもしれない。
落とし主がいればいくら落としたか証言もしてくれようが、落とし主がいないのであればいくらか使ってしまったのではないかと疑われるかもしれない。
自分は善良な市民なのだ。
そんな疑惑を抱かれたくはない。
「ううむ、困った……」
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