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 とうとう次の舞踏会の誘いに、王子自らが屋敷を訪れた。  久しぶりに会う婚約者は、記憶の中よりも随分と大人びて見えた。マリアンヌは一瞬胸をときめかせたが、長らくの不義理が負い目となって甘い感情はすぐに引っ込み、重苦しい気持ちが広がっていく。  これほど避け続けてきた自分のことを、王子は快く思っていないだろう。  王子は完璧な微笑みを爽やかに浮かべていて、その表情から真意を読み取ることはできなかった。 「次の舞踏会は、私が初めての主催を務めます。ぜひ、マリアンヌ嬢にもご出席願いたく、不躾とは存じますが直接招待に参りました」  そう言うと、王子はマリアンヌの手を取り、うやうやしく手の甲にキスをした。  初めて会った時と同じように、絵本の中から出てきたような王子様ぶりだ。けれど、マリアンヌはどこか冷ややかなものを感じて思わず手をこわばらせる。  公爵夫妻はそのことに気づかず喜んで王子と会話を続けていた。 「もちろん喜んで参加させていただきますわ」 「わざわざお越しいただいて恐縮の限りですよ」 「いえ、婚約者として当然のことです」 「王子もご主催される立場におなりなのですね。ずいぶんとご立派になられまして」 「まだまだ若輩者です。これからもぜひご指導ご鞭撻をお願いできれば幸いです」  しばらく和やかに話をした後、公爵夫妻は「後は久しぶりにお二人で」、と言いおいて満足げに部屋を後にした。
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