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博明は青木たちのことを考えていた。
――ナイフ持った青木が襲ってきたらどうやって戦おうか。いや、青木だけじゃない鎌田も一緒に2人組かも・・・。
ポケットからいつも持ち歩いている折りたたみナイフを取り出した。相手もナイフを持っているとしたらどれくらい役に立つかわからないけど、まあ無いよりはマシだろう。
それを見た由美が、
「なにそれ」
「バーベキューとかの予定もあったから何か役に立つかと思って持ってきたんだ」
博明は適当な嘘をついた。いつもナイフを持ち歩いているってことを隠したいと思った。
――二人きりだ。二人きりになったら由美に言おうと思っていたことがある。
「俺、実はさ、大学に入るまでけっこう暗い奴だったんだ。大学でサークルに入って裕也と由美と出会って、仲良くなって、俺、変わったんだよね。だから本当、感謝してるんだ。裕也もなんだけ、特に由美には感謝してるんだ。由美だけは特別っていうか」
――由美は元気がなさそうな様子だったけど、俺はまっすぐに目を見て伝えた。
「なんでそんなこと、いま言うの?」
「それは・・・、もしかしたらこれが最後になるかもしれないから」
これは由美と二人だけになったとき伝えようと思って、かなり前から博明が温めていた話だ。
――裕也も由美も友達だから二人の恋は応援するよ。俺は由美のこと好きだけど、二人のためにそれは言わない。代わりに"感謝"という言葉で由美に伝えよう。
博明は自分にそう言い聞かせてきた。いま急に裕也がいなくなったことで、博明はもう隠さなくてもいいんじゃないか?と、迷いが生まれていた。
――こうして薄暗い中で二人並んで座っていると恋人みたいだ。
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