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事件のあと、由美は博明の話をほとんど聞かなかったし、博明からもあまり話しかけなかった。
ただ、泊まる予定だった旅館にキャンセルの連絡をしなければいけなかったので、それだけ話して、博明から連絡するということにした。
奥手だった博明は、女性から好かれるという経験もなかったが、こんなに直接的に嫌われた経験もなかった。トラウマになるくらいに傷ついていた一方で、自分の今までの人生で何か大きなパズルのピースが抜けていたんだということに気付いたような気がした。
会計だった上山がサークルの銀行口座の通帳や印鑑を管理していたので、後日親族に連絡したりしてキャンセル代金をそれぞれの親族に返金したりしたが、残っている部費やサークルの存続についても対応する必要があった。
サークルの存続は自分に委ねられている。博明にとってそれだけの責任を任されるのは初めてだった。部員一人のサークルになってしまったが、音響機材やドラムのあるこの部室が使える間はきっと新しい部員も見つかるだろう。ここから博明は人として成長していく。
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