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そこには頭部から血を流して動かなくなったしーちゃんがいた。
「しーちゃん!」
斧田部長が血の流れる手でしーちゃんの肩を叩いくが返事はない。博明も裕也も見た瞬間にもうだめだとわかっていた。しーちゃん先輩は斧田部長の彼女だ。悲しみは計り知れないが、突然訪れたこんな状況を受け入れられるだろうか。
見回すと何人も怪我人がいる。一緒に貸切バスに乗ったサークルのメンバーは20人弱いる。
しーちゃんの後ろの席の南ちゃんは首から血を流して、すでに死んでいるようだった。なんでこんな怪我をしたんだろう。
「そうだ、救急車を呼ばないと」
裕也が言うと中程の席に座っていたマミやんが、
「もう連絡したから大丈夫!」
と答えた。他の人たちは、
「このままバスに乗ってて大丈夫か?ガソリンに引火して爆発とかするんじゃないか?!」
そんなことを言い出した。
「お前、タバコ吸うなよ」
「わかってるよ、お前もだろ!」
メンバーたちは軽音楽部員で、女性も含め喫煙者は多い。
「まだ怪我人がいんだぞ!置いていくきか?」
裕也が後方で話している人たちに向かって言った。裕也はそういう正義感みたいなのが強い。博明はそんなやり取りを余所に中央付近に席で割れたガラスで頭に怪我をした部員に声を掛けていた。だが治療する道具もないしどうしようもない・・・。
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