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後部座席の1年生連中は裕也の話を聞く気はない。
「ここに非常ドアがあるぞ」
「こっちのレバーだ!」
慌ただしくロックを解除して最後尾の右側にある扉が開いた。
「お俺、外の様子見てくる」
そう言って1年の青木が一番に出ていった。
「俺も行く」
「オレも」
と言って、1年の男子3、4人がぞろぞろと出ていった。
「あいつらの言うことも一理あるかも。ガソリンが引火したりとかあり得るし、様子は見てきた方がいいよ。怪我人の介抱は残った人でやろう」
博明が裕也をなだめる。元々、1年の中でも青木は目立つタイプの性格で、真面目なリーダータイプの3年の裕也と仲が悪い。
「ねぇ、これからどうするの?」
由美が席を立ってこっちに来た。博明と裕也と由美の3人は3年の仲良しグループで、裕也と由美は付き合ってる。
「助けてくれ・・・。動けないんだ」
中央付近の席に座っている巻田の席がガラスだらけになっている。
「ひどいな、これじゃ出られない」
歩いて通り過ぎたときには気づかなかったが、巻田の右側の顔半分にガラス片がいくつも刺さって血だらけになっている。血を拭こうとにも、まずガラスを1つ1つとらないといけない。そして席や前の席の背もたれもガラスが多数刺さっていて手を着く場所がない。
「席から出られないんだ」
巻田がしゃべっているが、しゃべるときも口元が痛々しい。
「ガラスを片付けていくしかないな」
裕也が博明に確認するようにいい、2人でガラス取りをはじめたがかなり時間が掛かりそうだ。
ハンカチを使って手にケガをしないように作業する。
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