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由美は2人のガラス取りの作業を手伝いたかったが、バスの席はさほど広くないので手出しするスペースがなかった。
バスの中を見回って手伝うことはないか探すことにした。
フロントガラスは割れて跡形もなかった。運転手はバスが衝突した壁と座席の間で押しつぶされて死んでいる。前方右側の席でしーちゃんが死んでいて、その横にまだ斧田部長がいる。その後ろの席で南ちゃんが首から血を流して死んでいる。左側の席では、窓を突き破って入ってきたコンクリートの塊に頭を潰されて、おそらく上山くんが、死んでいる。その後ろの席が巻田くん。ガラスまみれになっている。
惨憺たる状況。由美たちはその後ろの席だったが、自分たちが同じようにならずに済んで良かったと思った。
他にバスの中に残っているのは、リンちゃんとおかっぺのカップル。
つまり死者が4人と生きている人が7人。うち1人は、巻田くんは動けない状態。部員は全部で15人で、運転手を足すと16人いたわけだから5人が外を見に出ていったんだなと、由美は頭の中で計算した。
「リンちゃん、大丈夫だった?」
と、残っている二人に由美が話し掛けた。
「うん・・・」
「オレたちは大丈夫っす。こういうときは動かないで救助を待ってた方がいいって聞いたことがあるから。ここで待ってることにします」
不安そうなリンちゃんにおかっぺが付き添っているような感じだった。普段はのほほんとしていて癒やし系のおかっぺだが、こういうときに意外と肝が座っている。
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