5人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「外に行った奴ら、戻ってこないな」
巻田の周りのガラスをある程度取り終えて、博明が巻田の足や腕のガラスを少しずつ取り始めたとき、手の空いた裕也が言った。
「そうだな、外の様子、教えてくれればいいのに」
博明はあまり考えなしに答えたが、裕也は心配もしていた。
「もしかして、天井が崩れて全員潰されたんじゃないか?さっき崩れる音がしただろ?」
何度か瓦礫が崩れるような音がしていて、その度にバスの上に落ちてこないかとヒヤヒヤしていた。このビルは相当古いようだ。
「あぁ確かに、巻き込まれたかはわからないけど、なんか声も聞こえたな」
その声は、悲鳴といえば悲鳴だったかもしれない。
「オレ、見に行ってくるよ。こっちは頼んだ」
「あ、あぁ」
テンポよく動ける裕也をすごいと思う。博明は目の前のガラスのことだけで手一杯だ。
「裕也、ありがとう」
巻田が痛そうな口を動かして、出ていこうとする裕也にお礼を言った。
「様子がわかったら戻ってくるよ」
そう言って裕也は後部の非常口から外に出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!