1人が本棚に入れています
本棚に追加
三年後 俺は死刑が確定した。
控訴もする気が起きなかった。
俺のような凶悪犯を社会が受け入れてくれる訳がない。
だからここで一生を終えたほうが気分が楽に住む。
死後の世界だの幸せになれる本だの胡散臭い本をすべて読み漁り、薄味のご飯を食べ、たまにテレビを見ながら寝る毎日。
それが何故か俺にとっては幸せな日々だった。
刑務作業に追われ刑務官に怒鳴られる囚人、脱獄を企てた挙げ句すぐに捕まる囚人
そんな人達よりも俺は恵まれていた。
そんな日常が続いていた。
しかし突然終焉を迎える。
「囚人番号 1578 執行だ。」
五人の刑務官が俺を引っ張り上げる。
ついにその時が来てしまったかと少しがっかりした。
備え付けの饅頭を食べ、死後の世界についての神話を聞くと、目の前にはテレビで見たような紐がくくりつけてある。
あぁ俺もついに あの場に立つのか。
しかし、テレビで見たような無駄な抵抗はしなかった。
最後の最後で無様な醜態を晒したくなかった。
「何か言い残したいことはあるか。」
「父さん折角育ててくれたのにごめんよ。
母さん 因果応報って言葉を知っているか。」
今のあんたの事だよという言葉をグッとこらえた。
最初のコメントを投稿しよう!