龍神の杭

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 朝から京都駅に降り立った沙夜は、スマートフォンを片手に貴船行きの電車へと乗り換えを始めた。  京都駅から電車やバスを乗り継ぎ、貴船神社の最寄り駅である貴船口までだいたい五十分の道のりを行く。  もうすっかり夏になっている京都市内は新幹線を降りた瞬間にむわっと熱気に包まれ、何もしなくともじんわり汗ばんでくる。夏用とは言え、パンツスーツに身を包んでいる沙夜にとってはかなりこの暑さは身体にこたえるのだった。  しかし貴船口に到着した時にはそんな京都市内の暑さは和らぎ、貴船川の流れる音が耳に心地よい。その昔、京都の避暑地であったことも(うなず)ける。  沙夜は貴船口から出ているバスに乗って、貴船神社へと向かう。  この日の京都もよく晴れており、木々の隙間から青空が(のぞ)いていた。貴船の川床取材にはもってこいの好天である。貴船神社に通じる参道は貴船川の(そば)にあるため、そこかしこに川床をうたう店が軒を連ねている。そしてそのどの店も、かなりいい値段が書かれていた。  沙夜は事前に取材許可を(もら)っていた店へと入って行く。一般客とは少し隔離された予約席へと案内された。
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