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ガレント星人の宣言が出されてから、世界中は一致団結して彼等に娯楽を提供し続けなければならなくなったのだった。
幸いにして、連中は言語翻訳ができる装置のようなものは持ち合わせているらしく、どの言語でショーを披露しても充分に理解することはできるようだった。
演劇、ミュージカル、漫才、コント、ドラマ、映画、アニメ、大道芸、サーカス。ありとあらゆる娯楽のプロフェッショナルたちが、毎日のように新しいショーを考案し、彼等の前で切れ間なく披露することになった。彼等は同じショーは数回見ると退屈してしまうらしく、エンターテイメントのプロたちはえんえんと新しいアイデアを考え、新しい人材の登用に走り回ることになったのだった。
彼等を楽しませている間、地球は滅ぼされないで済む。
しかし彼等が退屈だ、この星に価値はないと思った瞬間、この惑星全員の命運が尽きてしまうことになる。
世界中のエンタメのプロたちは、素人さえも時に採用して頑張り続けたが、命がかかっているというプレッシャーから鬱になる人や、ネタ切れに悩む者達も当然続出することになった。
また、世界のありとあらゆる産業が“ガレント星人を楽しませるもの”を最優先されるようになったわけである。その結果、娯楽系以外の技術開発は大きく停滞することになった。特に医療系の停滞は深刻であり、人々は健康さえも後回しにされるようになってしまったのである。
『こんなこと、いつまでも続けていられるはずがない』
世界中のトップが会談を行い、絶望的な状況について話し合った。
『どうにかして、世界を救う方法はないのか。彼等をやっつける方法はないものか』
『そんなことができるならとうにやっている!核兵器さえ放射能ごと焼き尽くしてしまうような武器を持っている連中だぞ。一体どうやって倒せるというのだ』
『では、説得して穏便にお帰りいただくしかないか?』
『そんなことができるとでも?説得する言って宇宙船に入って行った日本とアメリカの外交官は、それっきり音信不通になったという話だが』
倒すことも説得することもままならない。自分達はこのまま滅ぼされるその時まで、娯楽を提供するマシーンと成り果てるしかないのだろうか。
その時、インドのトップがこんなことを言ったのだった。
『そうだ。私の国には今、世界最高の技術を持つ催眠術師がいる。彼に宇宙人たちに催眠術をかけてもらい、自分達の意思で地球から出て行ってくれるように仕向けるのはどうだろうか?』
一見するとそれは、名案であるように聞こえた。が、当然いくつもの問題がある。
一つ目は、催眠術が異星人にも効果があるかわからないこと。
二つ目は、そもそも異星人たちが全員術を目撃してくれないと効果がないのは確実であること。
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