捕まえた!

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捕まえた!

 その日の夜中、部屋の中は暗く、静まり返っていた。その暗闇の中を、何者かが足音を立てずに移動している。その何者がめざすのは、昼間に例の証拠物件が置かれていた白い机だ。その上には証拠物件と同じ代物(しろもの)、ただしボロボロになっていない、真新しい光を放つ袋があった。何者かは辛抱たまらんと言わんばかりに、一足飛びに机との距離を詰めると、その袋に手を伸ばした。袋のがさがさとした音が響き始めると同時に、部屋の電気が点けられ、部屋が明るくなる。何者かは急についた電気に驚き、袋に口をつけた格好のまま、ぴたりと動きを止めた。 「やっぱりお前だったな」 部屋の電気をつけた私はスタスタと机へと近づき、犯人の両脇に手を入れて、目の高さまで持ち上げる。 「クロ(すけ)。この食いしん坊め」 餌泥棒の犯人改め、我が家の飼い猫であるクロ助は、不服そうに低くニャーと鳴いたのだった。
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