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「宗方さん、宗方さん!」 「何よ? 付き纏わないで」 今日もやってる斉藤の奴。 斉藤は青葉に邪険にされてガッカリして席に戻ってきた。 「ダメだった……」 肩を落とす彼女は斉藤 沙優奈(さいとう さゆな)。 斉藤はしょんぼりした様子だ。 まぁ宗方からすれば何の嫌がらせだよとか思ってるだろうなぁ。 「沙優奈〜、あんたとあいつじゃ馬が合わないのよ。 やめときなって、仲良くなっても私ら宗方さんと仲良くなれる自信ないし」 「そんなことないって、宗方さんああ見えて自分の気持ちを伝えるのが凄く下手なだけで…… あッ」 そしてタイミング悪く現れる青葉。 当然舌打ちをされて青葉は自分の席に戻った。 「まったくなんなのよあの子。 最近前にも増してウザさが半端ないわ」 そして俺に先程の斉藤ことを愚痴る宗方 青葉(むなかた あおは)。 俺は新庄 世那(しんじょう せな)、訳あってこの宗方と仲良くなった。 青葉は美人だけど周囲とは距離を置く性格なんだけどそれは俺には現在進行形で適用されないらしい。 それは俺も似たような性格というか元々友達とか居なかったしな。 一方の斉藤は明るくて友達も居て俺や青葉とは違うタイプの人間だ。 けれどこれも訳あって俺は斉藤と仲良くなり青葉も斉藤から一方的に仲良くされている。 この2人は少し前に大喧嘩をした、それはもう男の喧嘩のように殴り合って。 そうなってしまった原因は俺にもあるのだが青葉は気に入らないと手段を選ばない奴で喧嘩と言ってもリンチに近かったけどどうにかこうにか丸く収まった。 今思えばよく丸く収まったなと思うけど斉藤の優しい性格のおかげだな。 「そう言うなって、確かに俺からしてみても斉藤のことは最初はなんだこいつ? みたいに思ったけどそういう奴なんだって思えば慣れるんじゃねぇな?」 「はッ! 何それ? 世那君は異性にそんな風に接しられて舞い上がって拗らせてんでしょ、このスケベッ!!」 「いってぇッ」 バチンと背中を叩かれた。 「ねえ二股君、ちゃんと私の気持ち考えてるの?」 「嫌な呼び方だな…… 」 それから俺は青葉と斉藤から好かれていた。 自惚れなどではなく2人から好きと告白されていたのだ。  青葉と斉藤が大喧嘩した原因は俺はこいつら2人と接していくうちに2人のことが好きになってしまったんだ、今まで他人なんてと思っていた反動からなのか二股と言われても仕方ないが…… 「考えてるよ」 「本当かなぁ?」 駐輪場に着いてバイクに跨ると鞄を掴まれた。  「なんだよ、乗ってくのか?」 「そうしよっかなぁ、世那君なんもしてこないし〜。 でもまた事故られたらたまんないしなぁ」 「さっきから言い方悪いよなお前」 まぁこいつが言うように俺はこの間バイクで事故って危うく死ぬかと思ったけど青葉が駆け付けてきてくれて助かってその時の傷もようやく癒えた。 「今日はひとりで帰りなよ病み上がりみたいなもんなんだから。 まー私が居ないと寂しいなら話は別だけど」 「はいはい、ありがとな」 家に着くと鞄を放り投げて部屋の壁に寄りかかって座った。  寂しいか…… 俺は青葉と斉藤と今更無縁になったりしたら寂しいって思うかな? そりゃあ思うか、なんせそういうことは自分はこの先もないだろうと思ってた自分が好きって行った相手だし。 俺には家族は居ない、施設で育ってアパートを借りさせてもらい今のこの状況がある、青葉の方も家族とは一緒に暮らしいてはいない。 まぁそこは似たようなもんだな。 一人暮らしと言っても特に娯楽のある部屋ではないのでその日は夕飯を食べ風呂に入って眠りに就いた。 「おはよう新庄君」 「おはよう」 「なんだか眠そうだね、もしかして夜更かししてゲームでもしてた?」 「ゲームなんか持ってない、昨日早く寝たら早くに起きちゃって二度寝したらこうなっただけだ」 「そっかぁ〜」 そう言うと斉藤はニコニコ機嫌が良さそうだ。 「お前こそそんなニヤニヤしてどうかしたか?」 「ニヤニヤって言われるとなんかあれだけど。 ええとね、新庄君のそんな所想像したらなんか面白くて、ふふッ」 「面白いか?」 「あ、ううん! それだけじゃないよ、そういうこと話してくれるようになったんだなぁってジーンとしちゃったし」 あ…… そういや。 言われると黙ってしまう。 「それでさッ、ああ〜」 そっぽを向くと斉藤は少しムスッとしたがこいつは俺のすぐ前の席なので構わず斉藤は話す。 「今度一緒にお出掛けしたいなって」 「え?」 「もっと前に言いたかったんだけどほら、私ちょっと前まで顔ボコボコだったしその後すぐに新庄君も怪我しちゃって今の今までずぅっと誘えなかったし」 「いやでも俺は」 「大丈夫、そう言うと思って私と2人きりだから!」 どう思ってそうなった? なんて…… 斉藤と出掛けるのか、うーん。 「ダメ?」 「とは言ってないだろ」 「じゃあいいって事だね!? やったぁ」 はぁ…… まあたまにはいいかと思って頷いた。
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