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 最初に感じたのは体の痛みだ。足から顔までの体の前方にツボを押されているようなごつごつとした痛みがある。足つぼマットにうつ伏せで寝転がっているような感覚だったが、湿った土のにおいと穏やかな水のせせらぎが聞こえてきた。  すぐに河原だと気が付き、体を起こした。   「ここは――? なんでこんなところで寝ていたんだろ?」   少女の目の前には川が流れている。川の対岸は濃い霧で見えなくなっていて伸ばした手の先すら見失ってしまいそうだ。この濃霧だ、この川がどれくらい大きいのかは見当もつかない。  足元には丸みを帯びた石の絨毯が地平線まで広がっていて、川の反対側は森や山もない平坦な世界。  ここにいても何か進展があるわけじゃないだろうと少女は川辺りを歩き始めた。穏やかな水面はよく見ると流れがあり、少女は下流へ向かう。  地面の石は人為的に敷き詰められたみたいに綺麗に並んでいる。粒の大きさもほとんど差異はない。まるで歩くのを想定して作られている。そのお陰で歩きやすくはあるのだが……。  どれだけ歩いても景色は変わらない。 「ヤッパリ知らない場所……。誰もいないしスマホは……ない」  この土地に覚えはないし、人影すら見えない。スマホにはGPSが搭載されているのでここが何処か把握できるかと思ったがポケットの中は空だ。落胆した少女の目に手首に巻かれているものが映る。 「腕時計……こんなものつけていたっけ……?」  ルビーのように赤く円形の時計盤に皮のベルト。左手の腕時計は【3時13分】で止まっていた。  少女が不思議に思ったのは時計自体に見覚えがないし、普段から腕時計を身に着ける習慣があったかどうかさえ分からない。毎日、どんな日常生活を送っていたかわからなくなってしまっていた。 「記憶喪失……? まさか、ね。きっと単にど忘れしただけに決まっている」  不安にかられた少女は無理やり笑う。再び歩き出そうとした時、どこからか声が聞こえた。 「アンタ、どれだけ歩いても何処へも辿り着かないわよ?」 「だれ?」  周りを見ても誰もいない。 「こっちよ、こっち。下を見なさい」  少女が下を向くと水面から一匹のウナギが顔を覗かせていた。      
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