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「……あ?」  脇汗と脂汗で溺れそうになる。やばい。 「おい、お前……いや、そんな訳ねえか」 「ハイ、ダイジョウブデス」  心臓が死にかけの魚みたいにピチピチ跳ねている。酸素がまるで水みたいだ。呼吸が絶え絶えになりそうになる。 「……型番663-12。どうやら闇の世界では一流の殺し屋として名を馳せているらしいな。確かに顔が、機械のくせに妙に凛々しいよ。信頼できる目をしている」  こいつの目はヘチマで作られたタワシなのか?こんな糞みたいな演技でどうして信頼を獲得できるのか。そんな悪罵を脳内で垂れ流すと、少しは気も紛らわせた。 「それじゃあ、ホノカ。こいつを点検してくれ」 「は……?」  後ろに侍っていた女が、こちらに近づいて来る。黒髪に少し茶髪が混ざっている。顔は可愛いと言うよりも綺麗で、薔薇の出で立ちを俺に想像させた。  そして目の前の女性の容姿を考えるのは、完全にパニックになっていたからだ。無理に動けばバレる。触られてもバレる。俺はまな板の金魚になった。頭では既に走馬灯が上映中だった。 「それでは、失礼」 「……!」  身体をくまなく触られる。目線は常に俺の目を突き刺してきて、生と死が彼女の冷ややかな腕に委ねられている。人の肌で、柔らかい。でも何処か取って付けられた様な。 「……!」  彼女の目線が、厳しくなった。 「……………………問題、ありません」 「そうか、こっちに戻ってきなさい」  彼女が元の位置に戻る。切り抜けた、のか? 「君の身柄が保証された。まあ元々見越していたから、別にどうという事でもない。そしてこれからが本題だ。君にはこれから、君の親を殺してもらう。当然比喩じゃない。かの有名なニシダ博士を、君とここにいるホノカに殺してもらう。理解できるか?」 「イエス!」 「……期限は1週間。報酬は10桁までなら幾らでも出そう。失敗すれば、分かっているな?」 「イエス!イエス!」  幾つかの確認事項と、契約書へのサインを交わして、依頼の契約を交わす。 「……」  その間無機質な彼女が、ずっと俺を見つめていた。
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