同じ未知を、君と

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「なんとなく、ここじゃないかと思ったんだ」  二人、道脇のガードレールまで移動する。並んでそこに腰掛けると、颯太くんは茶色の紙袋を私の前に差し出した。 「昨日、横浜に行って……赤レンガ倉庫のマーケットで見つけたんだ。有紗に似合いそうと思って」  ドキッとして、私はそっと紙袋を開けた。  中にはシュシュが入ってた。光沢のある布の色は、写真で見たオーストラリアの海のような綺麗な群青。  可愛いと思った。なのに、お礼のひとつも言えない。  颯太くんは力なく笑った。 「やっぱり怒ってる?」  私は首を振る。 「私こそ……嫌な気持ちになることいっぱい言ったし」  怒ってなんかいない。でも知りたいと思うことならある。 「……颯太くん、どうしてこの賭けをしたいと思ったの?」  尋ねると、彼は安堵したように息をついた。 「どうしてかな……また有紗に会いたいと思ったから、がほとんどだけど……それも含めて、自分本位な理由だよ」  私は何も言わず彼を見た。  続けて。 「……有紗、必須の留学の話をしてた時、紀美ちゃんがそれを喜んでるって勢いよく話してたのに、僕が『有紗はどこに行くの?』って訊いたら黙ったよね」
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