心を盗みます宣言

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結条未涼。 2年3組15番。 身長は学年の中でも高い180㎝あり、本人曰く地味に高い。 趣味の料理を極めるために料理研究部に所属している。 穏やかな性格で人当たりもよく、顔立ちも良いことから「王子」と呼ばれ学校内の女子からの人気が上昇中。 本人は黙っているが、成績は学年トップ。 好きな食べ物はカップケーキ、嫌いな食べ物は唐辛子。 「……って、学年1位は結条君だったんだ」 一日の授業が終わり、放課後となった。 私は部活へ向かった奈智を見送り、教室で一人彼女からもらった結条君の詳細メモを読んでいた。 本当はすぐに家に帰って勉強をしたかったが、放課後に結条君が来ると言っていたことを思い出し帰らず待機することにしたのだ。 先程口に出してしまったが、結条君が学年で成績トップだったことに驚きを隠せなかった。 基本、私達の学校はテストの成績順を貼り出す習慣もなく本人に成績表を渡すのみ。 そのため、誰がどの順位なのかは分からないのだ。 ただ、何故奈智が結条君の成績を知っていることを除いては。 「私でも学年2位が最高順位なのに……一体どんな勉強方法を使ってるんだろう?」 眉間にしわを寄せ、結条君が使っている勉強方法を考えていると教室の入り口から足音が聞こえてきた。 「花染さん!」 「!!」 聞き覚えのある声に私は肩をビクリと跳ね上がらせる。 声がしたほうに視線を向けると、昼休みに会った結条君が笑顔で教室に入ってきたのだ。 「出た、学年1位」 「えっ、学?」 「あっ、いや、何でもない」 思わず口に出してしまったが、相手が聞こえていないことが幸いに私は言葉をなかったことにした。 「それより、俺が来るまで待っててくれたんだ!」 「だって、昼休みにまた放課後って言ってたから……」 「そっか~」 結条君はニコニコと口角を上げている反面、私は彼から顔を背ける。 あんな真正面から笑顔で喜ばれたら直視できなかったからだ。 「てか、遅くなってごめん!これを渡したくて調理室まで行ってたんだ!」 「調理室?」 私が首をかしげていると、結条君はカバンから何かを取り出し渡しに「はい!」と差し出してきた。 目の前に差し出されたものに、私は目を大きくする。 「カップケーキ?」 彼の手には透明な袋で可愛くラッピングされた二個入りのカップケーキだった。 茶色のカップにほんのり焦げ目がついたケーキは、見ただけで食欲が増してくるほど美味しそうに見えた。 「そう!今日の家庭科で作ったんだ。上手くできたから花染さんにあげようと思ってラッピングもスマホで調べて可愛くしてみた」 「私にあげるため……」 私は改めてカップケーキのラッピングを見る。 止め口には茶色のリボンが飾ってあり、表面には犬や猫のシールが貼りつけられている。 よく見ると、彼がやらないようなラッピングの仕方だった。 自分のためにラッピングしてくれたことに、私は顔をほころばせる。 「食べてみてもいい?」 「そりゃあもちろん!」 「ありがとう」 私は袋からカップケーキを一つ取り出し、一口齧る。 すると、口の中に香ばしく甘い味が広がり私は目を輝かせた。 「美味しい!」 「よかった!中身生焼けだったらどうしようかと思った!」 結条君はホッとした表情をする。 「生焼けだったらどうしたの?」 「それは……俺が食べてた」 「嘘。お腹壊すよ?」 「……すみません、噓です」 彼の言葉に私は思わず笑みを零した。 同時に、結条君が笑ったり落ち込んだりする姿が珍しく思えたのもある。 普段、彼は皆から「王子」と言われてる通り貼り付けたような笑顔をしている印象が見られたからだ。 しかし、今目の前にいる結条君は普通の男子と同じような表情をしている。 彼の一面が見れたことに私は少し特別感を味わえたような気がした。 「で、君の心を盗めたかな?」 「なっ!?」 いきなり変なことを聞かれ、にやりと笑う結条君に私は驚いた顔を浮かべる。 「ぬ、盗めてないからっ!」 「えっ!?」 私は結条君からそっぽ向き、彼にバレないよう熱くなった頬を必死で冷ます。 口の中に漂う甘い味は、しばらく残っていたのだった。
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