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彼女の家の前に着くと、二人は目を合わせて頷き合った。楓の方がインターホンを鳴らす。
「ごめんください」
程なくしてドアの向こうから新堂詩その人が現れた。だが、詩はすぐに扉を閉じようとする。楓は扉を掴んで閉めさせなかった。
「詩、どうして歌わなくなったの? どうして姿を見せなくなったの?」
「答えたくない……」
詩は楓を突き放し、扉を閉じてしまった。
「待って詩!」
閉ざされた扉からは冷え切り閉ざされた彼女の気持ちが伝わってくる。楓はその場でしゃがみ込んでしまった。
それから二人は近くにあったファストフード店の一席で落ち込んでいた。
「あれは完全に塞ぎ込んでるなぁ。どうしよう……」
「どうしようたって、どうすれば良いのさ」
「オレに言われても、わからない。なんか傷ついている感じだったな」
「そうだね」
彼女の沈んだ顔を見て、その表情が二人にも移っていた。食べ物が何も手につかない。太陽はなんとなく窓の外を眺めた。そこにはある光景があった。
「ああ、良い方法があった。それこそ簡単な話だったんだ」
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