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エピローグ
家に帰る途中、病院から電話があった。
『奇跡です! 奥様の病気が治りました!』
なんと! 本当に良くなったのか! 蛇神様の言うことは本当だったのだ。
はやる気持ちをおさえて家に帰ると、入院していたはずの妻が待っていた。
「あなた、お帰りなさい」
「美沙紀! もう大丈夫なのか!?」
「はい。すっかり良くなりました」
だが、かすかにだが、違和感を感じた。何かが美沙紀と違うような。
「早速ご飯にしましょう」
その食卓を見て驚いた。皿の上にはこれでもかというぐらいに肉料理ばかりが並べられていた。
「美沙紀、これ……」
「ふふ、栄養がつきますよ」
勧められるがままに料理を口に運ぶ。美沙紀も一緒に食べる。その口を見て驚いた。
蛇のような舌があった……
「み、美沙紀」
「あら、バレてしまいましたね」
バレたという割には隠す気もない。そう言って彼女は続ける。
「私はあの時の蛇神です。ずっとあなたと一緒になりたいと思っておりました」
「蛇神って、じゃ、じゃあ美沙紀は!?」
美沙紀、いや、蛇神は、スマホを手に取って動画を再生した。そこには、病院のベッドで横になりながら話す、美沙紀の姿があった。
「私はもう、死ななければならないようです。でも、蛇神様が、あなたを悲しませないようにすると言って下さいました。今はもう、その言葉を信じるしかありません。目の前の人を私だと思って、私と同じぐらい大切にしてあげてください」
そこで動画は止まった。
「み、美沙紀……」
「あなたの大切なもの、盗ませて頂きました。心配しないでください。悪いようにはしません。あなたに助けられたその日から、こうなりたいと思っておりました」
助けられた蛇……、俺は夏の日に会った、あの蛇を思い出していた。
美沙紀の姿をした蛇神様は、くすくすと笑みを浮かべている。
やがて俺の心まで盗まれてしまうのだろうか……
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