第1話 - 思案

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–––可能性① 初めから私の超能力にかかっていない  この場合、月島さんの発言に違和感が生じる。そもそも〝私とあなたの秘密(シークレット・フェイス)〟の発動条件⑤と矛盾する。 –––可能性② 私の超能力にかかっている間に私のことを思い出した  この場合、月島さんの発言はブラフだった可能性が高い。しかしながら超能力にかかった後の容姿(ロングヘアーを後ろに団子状に束ねた髪型、眼鏡なし)を分かっていたことから発動後、彼女の何らかの超能力で強制的に解除された。 –––可能性③ 無意識のうちに彼女固有の超能力が発現し、彼女自身まだ把握していない  簡単に言えば可能性②と可能性③の違いは月島さんが意識的に超能力(ちから)を得ているのか、無意識的に超能力(ちから)を得たのかの違い。  もしも前者の場合、彼女は自分の超能力のことを報告せず隠していることになる。そうなると…… 「ややこしくなるわね……」  私が警視庁から派遣された主な任務は上野菜々美と特に月島瑞希の監視。彼女らに悟られないように潜入捜査向けの私が選ばれたわけだ。政府は月島さんの潜在能力を高く評価している。その一方で、あれ程の才能がありながら固有の超能力を発現しないでいることに警戒をしている。あまりにも強大な超能力だった場合の策をすぐに用意しておきたいという思惑。可能性②のことを考慮すると政府も警戒せざるを得ない。 ––––ザバッ  花は湯船から出るとそのまま浴室を後にした。
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