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サイクス学が始まって1ヶ月、授業内容は未だに10歳の頃までには知っていたような退屈な内容が続いている。話を聞くことに飽き、また、今日最後の授業であったことも相まって集中力が途切れて何となく外を眺めていたところを注意されてしまったのだ。
「いやー、クラスのマドンナが恥をかく姿は絶景でしたな〜」
授業後、菜々美は瑞希を冷やかす。瑞希はそれを横目で見ながら右頬を少し膨らませる。
「月島さん、放課後ちょっと来てくれる?」
徳田花が教室を後にする間際に瑞希に声をかけた。
「はい」
瑞希はそう答えた。
(怒られるのかな……? でも私も少し徳田先生に話したいことあるしいっか)
そう思いながら、帰宅の準備を進めた。
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帰りのHRが終わり、瑞希は菜々美に声をかけた。
「じゃあ徳田先生の所に行ってくるね」
「OK。教室で待っとくね」
サイクス学職員室は2階にあり、2年5組を過ぎた奥にある。瑞希たち1年1組の教室は真反対にあるため、教室を出て真隣にある階段を使ってしまうと必然的に2年生の廊下を端から端まで歩かなければならない。瑞希は上級生の廊下を歩くのは何だか憚られるため、1年生の廊下を歩くことにした。
部活に向かう者、帰宅する者、教室や廊下で会話をする者……。
いつもの日常と何ら変わらない光景が眼前に広がる。
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