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1年3組の前を通りがかった時、1年5組の副担任を務める徳田花が教室から出て来て5組と4組の間にある階段に向かってキビキビと歩いていた。
どこか覚えのある光景。
「あれ? デジャヴ? いつだっけ?」
答えを模索する前に徳田が瑞希に声をかけた。
「あ、月島さんこっちよ」
徳田花はいつも優しく微笑んでいる。
しかし、今はその優しい微笑みが瑞希を困惑させる。
「はーい」
瑞希は複雑な気持ちとは裏腹に明るい声で返事をした。
2人は階段前で合流し、そのままサイクス学職員室まで無言で歩いた。
部屋に入ると他の教師はまだ誰もおらずとても静かだった。
サイクス学職員室には大きな机が1つあり、それを6人で分けて使っているようだった。徳田の席は扉を入ってすぐ左の席、机で言うところの右端手前だ。徳田は椅子に座ると瑞希に言った。
「授業つまらなくてごめんねぇ。月島さんと上野さんには本当に悪いと思っているのよ」
予想外の言葉に瑞希は言葉を詰まらせる。そんな瑞希を余所に徳田は続ける。
「私の勘違いだったら良いんだけど月島さん浮かない顔してたけど大丈夫? 何か困ったことがあるなら遠慮せずに言ってね」
「え、、そんなことないですけど……。ただ最後の授業だったので少し疲れていて。集中力が途切れてしまいました。ごめんなさい……」
「高校生になってまだ1ヶ月だものね。無理せずに休むこともしてね」
「ありがとうございます」
一瞬の静寂。
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