#泥棒
寂れた商店街の小さな駐車場に停まっている、真っ白な高級外国車。僕は小走りで駆け寄り、指先で助手席側のガラスを叩く。
「お店、あったよ。みつけた」
パワーウインドウが半分だけ下りて、サングラスの彼女が面倒くさそうに顔をのぞかせた。
「遅い。何分待たせるの」
助手席のドアを開けてあげると、黒いヒールブーツが物憂げに降りてきた。レザージャケットを肩にかけ、長い髪を後ろになでつける。彼女はグッチのショルダーバッグを、僕に押し付けた。
「で、店はどこ。ここから歩くなんて、もっと近くに車停められなかったの」
すぐそこだからと彼女をなだめて、先導する。人通りのほとんどないアーケードに、カツン、カツンとヒールの音が響いた。
ヘアサロンと喫茶店を過ぎて左に曲がり、裏路地へと入る。化粧品店の前を通って、民家とアパートの隙間に歩を進めた。
「え、マジでここ行くの。わたしのブーツ汚れちゃうじゃない」
まるで勝手口のような、古びた引き戸。小さな札に、これまた小さな筆文字で『失セモノ出ル』と書かれている。
「マジでここなの。っていうか、これ、店なの」
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