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2.sure, I saw.
「ねえ、その話、私も聞かせて」
顔色を変えた担任と放課後に改めて話す約束を取り付けると、不安そうに瞳を揺らした藤井岬が一哉に声をかけた。
「刃物って本当なの?」
「本当だよ! 本当に見たんだ!」
「あの、さ。私もここ何日か誰かに跡をつけられてて」
「えっ? 岬、どういうこと?」
途端に周囲には人だかりができた。岬は女子に人気のある女子というやつで、常に女同士連れ立っている。
「最近吹奏楽部の練習で帰りが遅いんだ」
文化祭に向けてグループ練習をしているらしく、岬の所属するチェロが揃わず、一番遅くまで残るらしい。一年の岬は片付けで最後になる。準備室を出た後、自分の足音の後ろに誰かがついてくる気配があるのだそうだ。
「なにそれ怖い!」
「岬、部活早くなんないの?」
「文化祭までは難しいと思う。今は親に迎えに来てもらってるけどさ、足音がするのって校舎の中なのよ。だから私も一緒に相談に行きたくて」
「是非一緒に行こう。証言は多い方がいい。だよな、瑛人」
「それ、狼男なの?」
「それは……わかんないけど」
岬は複雑な表情で一哉を眺めた。
放課後、生徒指導室に行けば教頭も同席をしていた。
まず、瑛人が見たであろうものを一哉が噛み砕いて話す。校舎一階の北側廊下に刃物を持った、仮に狼男と呼ぶとして、が現れ、向かってくる。逃げれば追いかけられ、空き教室の隠れた。
「岬もか?」
「私もその、北側廊下の第二音楽室の準備室から出るときに、後ろから足音が聞こえた気が、して」
「ほら先生、やっぱ狼男はいるんだよ! な、藤井」
「え。うん、そう……ね」
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