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「じゃあ、今晩探す」
「まて、瑛人。もしいたらどうする。こちらも準備を整えた方がいい」
「おい相馬、茶々入れんなよ」
翔の苛立ちの声に一哉は小声で耳打ちする。
「翔、お前は瑛人に狼男が『今はいない』と言わせたいんだろ?」
「わかってんじゃねぇか、邪魔すんな」
「いない前提よりいる前提で探させた方が納得させやすいんだ。瑛人の話を組み立てる俺の身にもなってくれ」
「チッ」
もともと存在していている。それがいない。その路線が話が早い。信用を装った方が瑛人は言うことを聞く。そのことを翔もこれまでの経験で認識していた。
「一哉? 信じてくれるのか?」
「俺は見てはいないんだ。だから調べに行くんだろ?」
「おう!」
すぐにでも放課後に行くと言う瑛人に、一哉は再びため息をつき、慎重に準備するよう提案する。一日探しただけはお前は納得しないだろう、けれども教師に居残っていることがバレれば今後、瑛人がいるかどうかに興味を持つ。複数日を調査に充てるには教師の避けるべき見回り時間などと瑛人を説得する間、一哉はその手間に些かうんざりした。
「一哉、でもさ、俺本当はものすごく怖いんだ。だって刃物持ってるんだぞ」
「そうか。じゃあその対策も考えないといけないな」
「捕まえるのは無理だと思う。だって狼男だぞ。だから写真を撮らないと」
「そういえば人感センサーをつけるんだっけ。先生はいつからって言ってたっけな」
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