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海辺の部屋
東に準備されてたどり着いた海辺のホテル。
駐車場で降ろしてもらった。車から降りようとした時、東の不安が伝わって来た。春妃は東の手を一度握った。これで伝わっただろうか?全ての不安を払拭することは出来ないだろうけど、そんな東をひとり車に残して、春妃は車のドアを閉めた。
そして東から教えられた部屋へと向かった。
その部屋番号を確認して、ドアをノックをすると。
「開いてるよ。」
と中からの声。鍵式のホテルだった。
春妃がそのドアを開けると、突き当たりにテラスがあり海が見えた。そこに氷室は立っていた。
春妃が入って来るのを見ると、氷室は力無く微笑んだ。もう頭はセットもされてなくて、海風になびいていた。心無しか疲れているようにも見える。
春妃は氷室のいるベランダに並んで立った。
「お久し振りです。」
何から話していいかも分からなくて、出て来たありきたりな一言目。
「私のせいで嫌な目に合わせてしまったね。」
久し振りに聞いた氷室の声は、春妃の大好きな響く低い声だった。
春妃はふるふると首を振った。
「氷室課長も…被害者じゃないですか。」
氷室はふっと鼻で笑い、皮肉な笑みを浮かべた。そしてテラスにあるひとつの椅子に腰掛けた。もうひとつある椅子を春妃に勧めた。
春妃はその椅子に腰掛けた。
座っても、そこから海を眺めることが出来た。波の音が小さいながらもここまで届いて来る。
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