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きつね色の面を表にして、私は完成品をお皿に乗せた。
「はい、どーぞ」
そう言って、少しばかり見た目の綺麗な方を彼にあげた。テーブルの上には、出来たてのパンケーキが二枚、ホットミルクが二つ……あと、使うかどうか分からなかったが、マーマレードの瓶も彼のすぐそばに置いてやった。
「いただきます!」
私は手を合わせてから、パンケーキを頬張った。退院してから数日経った今日、久しぶりに手料理を振る舞ったわけだが、かなり満足のいく仕上がりになった。ふわふわで甘くて美味しい。
「やっぱり私は器用なんだねっ!」
続けて、二口目のパンケーキに手が伸びる。二口目も変わらず美味しく、"んー"と大袈裟に唸ってみた。正面の彼は何も言わずに、私を見て微笑んでいる。
「ねぇ、ようちゃん」
広いリビングに、私の声が反響する。予想より大きな音量で、言葉を出すか否か戸惑ったが、彼の優しい瞳に促され、喉の奥から私は言葉を引っ張り出した。
「私さ」
飛び出した声が湿っぽい。間もなくして、私の視界は歪んだ。
「パンケーキアレルギーの方がよかったよ……」
私はついに泣き崩れてしまった。パンケーキはまだ三分の二くらい残っている。正面にあるもう一方のパンケーキは、まだ湯気が立ち昇っていて、その向こうにいる彼は写真の中で笑っていた。
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