魔悪ノ使天

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 最近の世の中は物騒だ。と言うのも、ペスト医師のような格好をした殺人鬼があちこちで殺人事件を起こしているという。  およそ一か月の間で犠牲者の数は30人を超える。  犠牲者の年齢や性別は様々で、下は10代の学生から上は70代の老人と幅広く、住んでいる場所も様々であった。  殺害方法は大きく分けて二通り――短剣で心臓を一突き、銃で脳天を撃ち抜く、というものであった。  犠牲者の所有物には一切手が付けられていないことから強盗目的の殺人の可能性はゼロに等しい。  犠牲者には何ら接点も無ければ、殺害される理由も見当たらなかった。  更に、事件現場付近ではペスト医師のような格好をした人物が何度も目撃されている。  そのことから一連の事件はこのペスト医師のような格好をした人物による快楽殺人事件であるとして警察は捜査しているが、一か月が経過した今現在、殺人鬼に繋がる有力な証拠は一切掴めずにいた。  そんな膠着(こうちゃく)状態を他所に犠牲者の数は日に日に増える一方であった。  
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