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帰路についた私は少女を自宅地下室へと招き入れた。
朽ち果てた柱を伝う雨漏りがささやかな歓迎の音を鳴らす。
暗がりを恐れているのか、
少女は私にぴったりくっついて離れない。
古びた懐中電灯の明かりだけでは心細いらしい。
でも、不安に苛まれるのもあと少しの辛抱さ。
この先に待つ扉を開けば、きっと友達になれそうな子がたくさんいるよ。
南京錠を解くのは久々だ。下手すると数週間ぶりであろうか。
鍵を回す前から強烈な腐敗臭が鼻を突く。
しまった。しっかり食事を与えていればな。
すぐ他に目移りして、飼っていた子の世話を怠ってしまうのが私の悪いところだ。
しかしながら、年端もいかない少女が
徐々に衰弱していく様を観察するのが正直一番たまらない。
生命力が尽きれば、自ずと私に頼るしかなくなる。
生かすも殺すも私次第。
この支配的状況が快楽に結びつかなくて、何が楽しいだろうか。
「なんか臭いよぉ……」
しかめっ面で鼻をつまむ少女。ごめんな。友達は死んじゃったみたいだ。
開錠の瞬間、室内から大群の蠅が顔面に向かって飛び込んできた。
私の手落ちを責めるようでうざったい奴らだ。
冷徹な形相を少女に見られないよう、慌てた素振りでそれらを追い払う。
向こう正面に佇む闇は照らさない。照らしてはならない。
子どもは知らなくていいことがここには多すぎる。
白骨の山は空想に留めておこう。
「少し狭いけど気に入ってくれると嬉しいな。
忘れ物を取りに行くから、ちょっと待っててね」
藁を敷き詰めた床に少女を独り座らせると、私は地下室を施錠した。
泣き喚かないところを見ると、随分と聞き分けがいいようだ。
まだ自分の置かれた状況を把握できていないだけかもしれないが。
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