2-4

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翌日 黒いワンボックスカーに銃器を積み、防弾スーツの下に装備したサスペンダー型ホルスターに拳銃を収納する。 「投擲(投げ物)も各自、携帯するのを忘れるな」 隊長の指示を聞き、車に乗り込んだムツキ達は移動を開始した。 「隊長、質問があります」 スキンヘッドの富久山 哲太郎(フガヤマ テツタロウ)が挙手をした。 「なんだ?」 中年の隊長・・・宇賀辺(ウカベ)は怪訝そうな表情で挙手したフガヤマを見る。 「一度、襲撃された場所に我々を配備しても無意味では?」 「てめぇの頭には脳ミソの代わりに糞でも詰まってんのか?連中は工場に攻撃を仕掛けてるんだよ。単なる牛や豚の精肉工場なら放っておいても構わない。だが、ここを死守する為に治安部隊が配備された。連中は「ビンゴォー!」って喜びながら次はガチで攻撃をしてくる。意味、分かるか?」 「わ、分かりました」 それはつまり「何を根拠に攻撃してきたか知りませんが、正解です」と言っているようなモノだった。 フガヤマはムツキ、エリーと同期で身長は183cmあり、肩幅も広くムツキとは比べ物にならないくらいデカイ。気が優しくて、力持ちの彼は誰からも好かれる人間だが少々、頭の回転が悪い。 「余計な事を聞くと、印象悪くなるわよ」 エリーは仕方ないやつと言うように、ジロッとフガヤマを見て言った。 「仕方ないだろ、気になったんだから」 もう一人の隊員、ジョン・ベネロスキーはムツキ達より三年先輩で頬に傷を持つ身長185cm、体重は90kgとフガヤマより更に良い体格をしている歴戦の猛者。 金髪の長い髪を後ろで一本結いにしている。 運転を任されている彼は、ミラー越しに窓から外を眺めているムツキに声をかけた。 「ヘイ、ムツキ君」 「はい・・・何でしょう?」 「教官から聞いてるよ。ストロングなんだってね?今度、休日にスパーでもどうだい?」 「僕が先輩と?よして下さい。この体格差じゃ、ウォーミングアップにもなりませんよ」 「・・・ハッハッハ!それもそうだね」 笑うジョンを尻目にエリーが小さな声でムツキに言う。 「てめえじゃ相手にならないって言ってやれば良いのに」 ムツキはエリーの言葉を聞かなかったフリをして、また視線を窓へと移す。 現場に到着したムツキ達が塀に囲まれた工場の出入口で警備を続けること数時間・・・妙な機械音がフガヤマの耳に入ってきた。 「隊長」 「どうした?」 「いや、今・・・ウィーンって機械音聞こえませんでしたか?」 その音は徐々に近づいて来る・・・そして、ムツキ達の前には姿を現した。 全身黒褐色の鋼鉄のボディ、肩幅が広く、厚い胸、腕は足より太く、右腕には機関銃、左腕には刃渡り90cmのイジリウムブレードを装備している。 一見するとゴリラのようなデザインをした全長2mの戦闘ロボット『GORI-1000』が右腕をムツキ達に向ける。 「皆、塀の中へ!」 ムツキの言葉を聞き、隊員達は速やかに塀の中へ駆け出した。 しかし、フガヤマが背後から機関銃の弾丸を浴びて蜂の巣にされてしまった。 吹き飛ぶ頭部と肉片、血が雨のように飛び散る・・・防弾仕様のスーツがまるで意味をなさない威力だった。 「ふ、フガヤマー!」 エリーが名を呼ぶが、もうフガヤマが返事をする事は二度と無い。 フガヤマの死を気にも留めず、ウカベとジョンは懐から拳銃を取り出し会話を始めた。 「なんだ、あの大それたオモチャは?」 「遠隔操作型の戦闘ロボットですかね。頭部のモニターを破壊しましょう」 ジョンは塀からほんの少し身を乗りだし、拳銃を構える。 しかし、ジョンが撃つより遥かに早くGORI-1000が機関銃を連射しジョンの右半身が吹き飛んだ。 「判断が軽率すぎるんだよ。熱感知にオートエイム搭載型だな」 そう言いながら、ウカベは手榴弾のピンを抜く。 「これで終わりだ。お前ら、下がってろ」 塀を遮蔽にしたまま、ウカベは手榴弾を投げようと構える。 しかし、次の瞬間・・・GORI-1000の左腕から発射されブレードが塀ごとウカベの身体を貫いた。 血を吐き出して死んだウカベの手から、手榴弾が落ちる。 「エリー!」 ムツキはエリーの手を引き、乗ってきたワンボックスカーの陰に隠れた。 手榴弾の爆発により、ウカベの身体が木っ端微塵に吹き飛んだ。 「あ、ありがとうムツキ・・・どうする?隊長までやられちゃったよ!?」 「僕が囮になるから、合図をしたらエリーは車に積んであるライフルを使って工場の屋上から狙撃してくれ」 「・・・わかった。ムツキ」 エリーはムツキの手を握り締めて真っ直ぐな瞳で見つめ、言った。 「死なないでね」 「わかってる・・・頼んだぞ、エリー」
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