グレーテル

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 私の絵が表彰された。 帰り道、私は友達に忘れ物をしたと嘘までついて一人で帰った。 「食べられないおうち」の前まで来た時、無性に絵が見たくなってランドセルを開けた。 「ねぇ」 びっくりして顔を上げると、 かりんとう階段の左のドアに、男の人が立っている。 「何の絵? 見せてよ」 ずかずかと歩いてくる。 私は絵を抱いて後ずさった。 「なにびびってんの?」 逃げ出したいのに足が動かない。 「見せろってば」 男が両手をのばしてきた。 「やだっ!」 私は走り出した。
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