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「いや、言うてさあ、楽器やってなきゃ、伴奏からの入りだって難しいだろ。しかも人前で歌うのにも慣れてないんだろ? そりゃ緊張で喉、硬くもなるって」
「そうそう。俺なんて最初、産まれたての仔鹿みたいに震えてたわ」
「はあ? 山登なんて、仔鹿は仔鹿でも、転生四回目とかのやつだろ……て、トマはこんなんと、今のボーカルくんを比べてるんだろ? そりゃ気の毒だわ」
「や、つーか、そもそもの性格が合わねーもん。オドオドしてるし」
「あー、お前、そのおっとこ前の顔顰めて威圧してんだろー」
俺の肩を組み、笑いながら見上げる絆さん。それを山登さんが引き剥がしながら、握った拳の人差し指の部分で俺の眉間をグリグリと捏ねた。
「ダメでちゅよートマちゃん、男前は黙って眉顰めてたら倍々で怖いんだからー。そこはもう褒めて煽てて、伸びやかに、よ。音楽は楽しまないとー」
「拳骨、地味に痛いっす」
───褒めて煽てて、伸びやかに、ねえ。
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