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【 プロローグ 】
『パチン!』という音が、狭いアパートの部屋に響き渡った。
手を添えると頬は熱くなっており、おそらく赤く腫れ上がっていたと思う。
頬をぶたれたのはいつぐらいぶりだろう。あれは小学校の1、2年ぐらいだったか。
あの時も、確か僕が何かを盗んでぶたれたんだ。
でも、17歳の高校生になって、同じ人にビンタされるとは思わなかった。
目の前には、毎日顔を合わせる人が顔を赤くして怒っている様子。
少し寄り目でそばかすのある、短めで栗色の髪をした大人の女性。
僕は、彼女が寝ている間に、思わず唇を奪った。
いつも目にする大好きな人の顔。いつもの部屋でまた盗んでしまった。
そう、母の唇を……。
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