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【 ふたりぼっち 】
まだ朝も早い時間。海に入っている人もまだいないか。
そう思ってスニーカーを脱ぎ、海の中へと足を入れる。夏と言っても朝は少し冷たく感じる。
服のままザブザブと腰辺りまで入っていくと、今から死ぬんだと急に我に返った。
一度立ち止まり、遠くの海を見る。深く濃い藍色の海が僕を飲み込もうとしている。
すると、少し行ったところに人影が見えた。
さっきまでは全く気付かなかったが、少女の後ろ姿がそこにある。
その人は、なぜか服を着たまま海の中へとどんどん歩いている様子。
胸のところまで既に海の中。もうすぐで、首の位置まで来そうな勢いだ。
「な、なぜ……?」
僕は急いだ。何か理由がありそうだ。
「ねぇ、君! それ以上行ったら、危ないよ!」
栗色の髪をしたその少女は、首まで海に浸かった状態でこちらを振り向いた。
その時見た彼女の顔。
僕は咄嗟にその少女の元まで泳いで行った。
「ぷふぁ! 君、どうして!」
彼女の腕を掴んでこちらへ引き寄せる。
するとその少女は、僕に一言こう言った。
「ごめんなさい……」と。
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