プロローグ

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プロローグ

家族ぐるみで仲良くしていた私の隣りの家には、2人の兄弟がいた。 兄 本城 奏多(ほんじょうかなた) 4歳上 弟 本城 桃也(ほんじょうとうや)は 私 日比谷 咲茉(ひびやえま)と同じ歳だった。 小さい頃からいつも3人で毎日遊び、ピアノのレッスンに通っていた。 奏多兄はしっかりしてて、いつもドジのあたしとやんちゃな桃也の面倒をみてくれた。 奏多兄は、あたしが先生に怒られて落ち込んで泣いていた時、ピアノを誉めてくれた事があった。 「咲茉のピアノは、暖かい春みたいで陽だまりみたいだな」 子供の頃はよく意味がわからなかったけど、先生に怒られた事より奏多兄に褒められた事が嬉しかった。 それから奏多兄を意識し始めた。 奏多兄は真面目で、弾くピアノも正確なタッチで力強く長い指が鍵盤の上で踊る。 ーーなんでこんな綺麗な音を出せるのだろう…… いつも奏多兄の弾く姿を見ていた。 大好きだったし、目標の人だった。 桃也があたしをいじめると奏多兄がいつも優しく 慰めてくれた。 「俺がずっと一緒にいるから大丈夫だよ」 奏多兄はあたしを抱きしめてくれる。 あたしは奏多兄の腕の中の温もりが心地よく、いつも笑顔になっていた。 みんなが成長し高校生になった奏多兄は、何度もコンクールで優勝し、高校生ピアニストとして有名になっていた。 イケメンだった事もあり、ファンを名乗る人もよく家の前まできていた。 成長すればするほど、昔みたいに奏多兄に簡単に自分から声がかけられなくなっていた。なんだか私の知らない雲の上の人だった。 でも私は、ピアニストとしての奏多兄だけではなく、真面目ででも俺様で、優しい奏多兄を知っているから憧れだけでは終われなかった。 時々奏多兄が、私に声をかけてくれた。私は嬉しくて1人で頬をいつも赤らめた。 その日はいつも興奮して眠れなかった。
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