黒猫

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黒猫

その日は、ハロウィンの店内イベントで、コスプレ衣装着用の日だった。 私は黒猫の耳と編みタイツ、お尻に尻尾をつけた黒のミニスカートを着ていた。 いつものようにピアノを弾く。 小さい頃から、ピアノを弾いている時はいつも無心になり音楽だけに向き合うことができる。音と向き合える時間が好きだった。ピアノがあたしを癒やしてくれていた。 すると1人の男の客が私のピアノの横にきた。 演奏しているあたしの手を引っぱった。私はびっくりしてその人を見た。 スーツを着た細身のイケメンは眼鏡をかけていた。大人になった奏多兄だった。 私は一瞬目を見開き驚いたが、この場所での出会いに戸惑いを隠せなかった。 「咲茉……何してるんだ!こんな所で!」 静かに兄は怒っていた。怒られているのに、久しぶりにみた大人になった奏多兄…。 眼鏡をかけて、相変わらずのイケメンな顔であたしを睨んでる。 「仕事……ピアノ……」 あまりの怖さとごまかす言葉を必至に頭の中で探した。単語だけとりあえず出た。 奏多兄は、ジャケットを脱ぎ私に投げる。 「着ろ!帰るぞ!」 見つかったことに焦りすぎて自分が今、猫のコスプレをしていることに気がついてなかった。 私は真っ赤になった。 あたしは奏多兄にそのまま腕を引っ張られ、タクシーに乗せられて奏多兄の家に連行された。
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