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「ああ…また…」
身体がピクリとひと揺れして
我にかえったのは彼女の姉。
趣味の刺繍絵をしているうちに
居眠りをしていたらしい。
刺繍途中の百合の花…
無意識の間違いか無数の穴が
空いてしまっていた。
午前零時まもなく夫は
「接待も楽じゃない」
あまり呑んでもいないのに
酔いを演じる体で帰る。
(ヌケヌケと…)
怒りがこみ上げてくるが
簡単にそれを出すわけには
……いかなかった。
(今度の相手は妹…)
ジリジリと燻る胸に
風を伴う小雨が窓を打つ。
「そばえ…風の戯れ…
大雨の前触れなのに
いつまで百合と…
一緒に…いる…つもり…」
百合の花にまた針を刺す…
プツリプツリプツリプツリ
また眠りが姉を襲うが
針は止まらない。
外は……
ー 了 ー
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