0人が本棚に入れています
本棚に追加
可能性の芽を刈り取るため、敵兵は少年を攻撃の対象に加えた。将来、自軍を脅かす存在になり得るだろう存在を、無視するわけにはいかなかった。
「ぐっ……!!」
今まではおまけ程度でしか無かった剣戟が勢いを増し始める。先輩兵士は当然そのことに気付いているが、敵も加勢させないよう、確実に少年を始末するために妨害していた。
自身の対処に手一杯で、少年が何とかして負傷しないよう祈るしかなかった。
兵士達一人一人は、敵に負けない雑草のようなしぶとさがある。だが、相手の方が戦術も数も上だ。心持だけではどうしようもない力量差がある。次々と刈り取られていく仲間を見ながらも、兵士の責務を果たすために奮闘するしかない。
「!!っ……!!」
そんな折、遂に少年が斬られてしまった。
囲まれ、背中を横に一太刀。経験したことない痛み。命が尽きかける想像に冷や汗を流し、言葉に詰まり、声にならない音しか出せなかった。
(怖い……!!)
初めて感じる死の気配に、少年は恐怖を覚えた。
死を目前にして、様々な想像が否が応でも頭に浮かんでくる。命が刈られる自分の姿を想像し、手が震える。冷や汗がとめどなく流れ、剣が離れそうになる。
震えは足にも伝わってきた。今にも膝から崩れ落ち、地面に付いてしまいそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!