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これは、ある国の、ある城のお話し。
名は歴史に刻まれることの無く、後世の地は雑草が生えるだけになっている。当時ならどこにでもあるような、突出した特徴は持ち合わせておらず、簡単に刈られてしまうような場所。
「よしお前ら!今日も訓練に勤しめよ!」
「はっ!!」
そんな未来のことは露知らず。城の兵士達は朝の日差しと共に、訓練用の広場に集まり、己を鍛えあげていた。誰もが栄光が永遠に続くと信じ切り、守るべきモノの為に手を抜くことは無かった。
小規模ながらも、統率力があり、日々鍛錬を重ねているおかげで体格が遥かに良く、一人一人が屈強の戦士に仕上がっている。まるで雑草の根のように力強く、簡単には命を刈られること無い実力を持っていた。
「ふっ……!ふっ……!」
そんな屈強な男達が揃う中。
まだ細く青い少年が一人、懸命に剣を素振りしていた。
兵士に志願してまだ半年。年端も行かず、まだまだ新入りから抜け出せていないが、志は誰よりも強く持っている。この国で生まれ、育ち、愛国心を持ち、皆を守るために命を懸ける兵士達に、子どもの頃から憧れを抱いていた。
力を付けるため、自分なりに素振りをして鍛えたりもしていた。当時は棒を考え無しに振るだけの、端から見れば遊びとしか思えない行為だったが、少年は真剣だった。
いつか兵士になりたい。そんな漠然とした思いを抱き続けていた、ある日。
いつもの日常は、唐突に刈り取られた。
突然、城が敵の襲撃にあったのだ。城に向かうためには城下町を通らないといけない。運悪く敵に目を付けられた少年の家は襲われ、家の物を奪われたあげく両親は無残にも殺されてしまった。
目の前で起こる凄惨な光景に、ただ震えることしか出来ない少年を助けたのが、この城の兵士だった。
敵をなぎ倒す彼らの勇猛さ。それを見て、自身の弱さに気付き、少年は二度と大切なモノを失わないよう強くなることを心に誓った。
自身の命を救われ、敵を打ち倒す勇姿に、少しでも追いつきたいと、日々努力している。だからこそ、若いながらも試験に合格し、訓練にも根を上げないのだ。
いつか、この場にいる誰よりも強くなれる。
言葉には出さないが、先輩兵士達は誰もがそう思い、若き兵士を見守っていた。
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