泥棒失格

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 住宅街が寝静まった深夜。俺は行動を開始した。  電柱の灯りを避けるように目的の家に向かう。昼間に目をつけた家々だ。どこに金目のものがあるか、侵入はどこからするか、イメージはできている。  一軒目は昼間から高級外車を駐車場に並べた会社経営者の家。塀を乗り越え、脱衣場の窓から入り、タンスを漁った。  とにかく長居は禁物。すべての仕事は三分以内と決めている。欲を出せば墓穴を掘る。兄貴はそれでパクられた。二軒目もそれなりに収穫があり、三軒目に向かうときだ。  昼間見たアパートの前を通ったとき、赤ん坊の泣き声が聞こえた。必死になにかを訴えるような声に俺は立ち止まらずにいられなかった。  アパートの裏手に回り部屋の様子を窺う。赤ん坊の泣き声はするのに明かりはない。何かあったのだろうか。胸騒ぎがした。  俺はベランダの手すりを乗り越え、窓に手をかけた。  開いていた。嫌な予感がして部屋に入る。  部屋には赤ん坊がひとり布団に寝かされ、泣いていた。母親はどこにもいなかった。
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